診断士目線で行う返済緩和・リスケジュール支援

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返済緩和・リスケジュールとは?

こんにちは。熊本の中小企業診断士、経営コンサルタントのLEPコンサルティングです。今回は借入の返済緩和・リスケジュール(以下、リスケ)を考えていきたいと思います。

そもそもリスケとは金融機関では条件変更と呼ばれる手続きの内の1つで、借入をした当初の返済条件と異なる内容に変更することを言います。例えば、返済期日の延長や、返済金額の緩和元金据置などが挙げられます。

もしあなたが銀行から資金を調達したものの、事業がうまく行かずに約定返済が厳しい場合は、この条件変更手続きを早めに依頼する方が良いでしょう。

なぜなら、延滞が発生してしまうと銀行との約定書に基づき期限の利益の喪失という状態に陥り、借入金全額の一括返済を求められてしまうからです。

期限の利益の喪失とは

期限の利益とは債務者が持つ「決められた期限までにお金を返せば良い」という利益のこと。

その利益の喪失とは債権者(銀行)が「あなたが延滞で支払の約束を破ったのだから、こちらも約束の期日ではなく、ただちに全額を返済請求します!」と言う感じです。

通常、1回の延滞でこの手続きに入ることはありませんが、大多数の銀行の約定書には延滞回数の明記はありませんので、極論、1回の延滞でもこの手続きに入ることができます。

実務上、延滞3回に達すれば間違いなく銀行は何かしらの債権保全の手続に入ると考えて良いでしょう。

リスケ先には原則として新たな融資は困難になるため、安易な依頼をすべきではありません。当然の話ですが、既存の借入も約束通り返済できてない先に、追加で融資しても約定返済をしてもらえる可能性が低いからです。

銀行にとってもリスケは喜ばしい内容の話ではなく、リスケを受けるためにはいくつかのハードルやポイントがあります。今回は、診断士の目線でこれらを解説していきます。

  • そもそもリファイナンス(借換)で対応できないか検討する。
  • リスケを依頼する時は「自分が債権者だったら?」と考える。
  • 返済緩和中に取り組む内容(自助努力)を伝える。
  • 金融機関の経済合理性も考える。債権者を平等に扱う。

ポイント①:リファイナンス(借換)で対応できないか?

例えば下記のような借入状況で、返済が厳しく銀行に@167千円→@50千円に返済緩和を依頼するとしましょう。

当初借入現在残高借入期間返済金額
10,000千円2,000千円5年(60回)167千円

単刀直入に言うと、上記のような状況であれば条件変更ではなく借換融資がベストな選択です。実際に国もこのような積極的な借換融資の活用を推奨しています。

つまり、下記のように現在残高の2,000千円を3,000千円に増額して、新たに5年間の融資に借り換えれば、希望緩和額の50千円が実現できるのです。

新規借入真水金額借入期間返済金額
3,000千円1,000千円5年(60回)50千円

ちなみに1つの基準をお伝えすると、現在の金融常識では最長15年までは正常債権の範囲内とされています。現在残高を15年で除算して、その金額を支払うことが出来るのであれば、借換での対応を検討すべきです。

借換はリスケではありませんので、この取組みを実行した後に新規融資のハードルが極端にあがるということはないでしょう。

ポイント②:自分が債権者だったら?と考える

これは当然と言えば当然なのでが、案外忘れがちな視点です。リスケとは、要は「きちんと毎月返すとお約束したけど、返せなくなりました」ということです。

もし、あなたがお金を貸した側で、貸した相手が約束通りに返せないと報告に来たら、どんなことを尋ねますか?おそらく、次のようなことを聞くのではないでしょうか。

  • 今どういう状況で、なぜ返せないのか。
  • 約束通り返せなくても、少しは返せるのではないか。
  • 所有資産を売却すれば返せるのではないのか。
  • いつになったら返せるようになるのか、またそのためにどんな努力をするのか。

リスケを金融機関に要請する際は、債権者会議(バンクミーティング)が開かれることが多くあります。債権者会議では債権者から現況の説明や今後の方針と見込みの説明を求められるでしょう。

要はこれらの観点を書面に落とし込んで、債権者に説明する資料が改善計画書と呼ばれるものです。(実際の計画書は詳細の行動計画、数値目標、根拠なども含みます。)

また、現況を説明する上で必要不可欠な資料の1つが資金繰り表です。これは今手元にどの程度の現預金があり、今後半年間でどう推移するのかを表す現金ベースの収支予想表です。

当たり前ですが、現預金が潤沢な資金繰り表ならば、そもそもリスケは不要と判断されますし、リスケをしても資金ショートする見込みならば、事業継続不可能なのでこれもまたリスケは不要(=債権保全が必要)と判断されます。

リスケに計画書が必要と言われる理由がお分かりになるのではないでしょうか?リスケに限らず、資金調達でもそうですが、「自分が債権者だったらどう考えるか」という視点は非常に大事です。

ポイント③:リスケ中に取り組む『自助努力』を伝える

上記のポイント②でも触れた、リスケ中に何を努力するのかという点を深堀します。個人的に、ここに妥当性があるかどうかがリスケの金融支援を受けれるかの分かれ目になると考えます。

私の自論として、リスケは企業の自助努力ありきであり、あくまで自助努力で不足する部分を補う役割と考えています。事業内容的な努力をするのは当然ですが、それ以外にも下記の観点があります。

  • 役員報酬を適正な範囲に減額しているか。
  • 役員借入金がある場合、その返済をストップし、残高維持に努めているか。
  • その他削減できる経費(交際費や交通費)を切り詰めているか。

あくまで原則論であり、個別の事情によって当然に調整が必要ですが、例えば役員報酬で言えばリスケ企業ならば年収500万円程度に抑える必要はあるでしょう。

例えが適切かは分かりませんが「母屋でおかゆを食い、離れですき焼きを食べる」というようなことがないように、経営者自身も経営責任という観点で私生活を見直し、できるだけキャッシュを会社に残すように心がけましょう。

私生活で資金がどうしても必要な事情がある場合は、きちんと債権者に説明をしましょう。例えば、役員借入金の返済をストップについては、仮にその元手が役員が銀行から借りたフリーローン(転貸資金)であれば、その返済財源を確保するためにも、役員借入金の返済継続はやむを得ないでしょう。

事業内容的な自助努力(営業強化や在庫処分など)はポイント②でも記載したように、具体的に根拠を持って計画に落とし込んでいく必要があります。

ポイント④:金融機関の経済合理性を考える

これも「相手の立場にたって考える」という基本的なスタンスの延長線上になりますが、そもそもなぜ債権者はリスケに応じるのでしょうか?

答えは「今無理やり回収するよりも、リスケで支援した方が最終的な回収が最大化される」からです。逆に言えば、この経済合理性がなければ(本来は)リスケには応じられません。

リスケを依頼する場合は「今返せないからリスケして下さい」ではなく、「今はこういう状況で厳しいが、こういう努力をして、近い将来に必ず当初金額で返せるようになると考えるのでリスケして下さい」というスタンスが必要です。

金融機関の融資という与信行為に対するリターンは微々たる金利です。出資のように配当を得たり、キャピタルゲインを得たりというリターンではないので、なによりも元本回収は重要な要素です。

企業からの説明が不十分だと、少しでも確実に元本を回収しようと不動産担保を処分したり、預金と貸金を相殺したりという債権保全の手続きを検討することでしょう。

また、金融機関の経済合理性の観点で大事なのは、偏波弁済をしないということです。

偏波弁済とは

偏波弁済とは、特定の債権者にだけ返済する行為のことです。

例えば、A銀行とB信金から借入がある状態で、A銀行にだけリスケを申し込んだら、A銀行はどう考えるでしょうか?

A銀行「B信金にも借入があるのであれば、債権者間で平等になるようにB信金にもリスケを要請して下さい。」

と確実に言うでしょう。そうでなければ、A銀行としては破産手続きでもして、平等に返済原資を配分してもらった方が良いかもしれません。

リスケを要請する場合は、必ず全ての債権者と調整をした上で進める必要があります。

偏波弁済を防止するために、リスケを行う際は金融機関との調整を行い、通常は残高に応じた按分(残高プロラタ)で返済を行います。元金据置を行う場合は全行協調して据置です。

リスケの局面はある意味、企業も金融機関も同じ方向を向いているとも言えます。しっかりと情報開示し、金融機関と協議・調整を行いながら、真摯に事業改善に取組んでください。

まとめ

ここまでの各ポイントを金融機関に説明する際には事業計画書が必要になります。しかし、相手は金融のプロであり、立場的にも強くなりがちな債権者です。

そこで、経営支援の専門家として中小企業と共に計画策定・金融交渉を行うのが我々、中小企業診断士です。是非、お困りの際はお近くの診断士に相談してみてください。

最後に、「リスケの中にはとりあえず元金を止めて、その間に計画書を作りましょう」という暫定リスケというものもありますが、出来るだけそういう状況にならないように、早め早めに対策を行いましょう。

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